掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは、手のひらや足の裏などに膿をもった小さな水膨れ(嚢胞)が多数現れる皮膚の病気です。良くなったり悪くなったりを繰り返します。また手足以外の体の部分や爪にも現れることがあります。
一見水虫に似ていますが、膿疱の中に細菌はいません。そのため他人に感染することはありません。
発症年齢は30〜50歳が多く、特に女性に多い傾向があります。日本人に多いと言われています。

掌蹠膿疱症

症状や特徴

「手のひらや足の裏の場合」
まずは小さな水ぶくれが生じます。次第に、白い膿をもった膿疱に変化していきます。出来はじめの水ぶくれはとても小さいので、かゆみで気づくこともあります。その後、かさぶたとなって剥がれ落ち、剥がれ落ちた後の皮膚は赤くカサカサとした状態になります。
掌蹠膿疱症はかゆみだけでなく、皮膚のひび割れから痛みを伴うこともあります。そのため日常生活に支障をきたす手足の膿疱に悩んでいる方が多くみえます。
「手足以外の体の場合」
カサカサした紅斑を生じたり、爪の場合は割れて変形したり凹んだり、剥がれて浮いたりもします。
時折骨や関節部にも炎症が起きて激しい痛みを伴うこともあります。

掌蹠膿疱症と歯科の関係性

日本人の掌蹠膿疱症の多くはステロイド軟膏等の塗り薬ではあまり効果がでません。掌蹠膿疱症は扁桃や歯科との関連が深い病気です。そのため扁桃摘出や歯科治療で治癒するものがほとんどで「手の湿疹を治すために歯の治療をします」と歯医者に通われる方もいます。歯科医院で歯周病の治療や根尖病巣の治療、お口の中の金属を除去することで症状が良くなると言われています。

掌蹠膿疱症の原因

掌蹠膿疱症の原因には分からないことも多く残されています。中でも金属アレルギーや病巣感染、喫煙が発症に深く関わっているとされています。その他にも便秘や睡眠不足、ストレス、原因物質の排泄能力低下などの様々な要素が絡み合って発症・悪化します。

病巣感染

症状のほとんどないような慢性的な炎症が体のどこかにある場合、それが原因となって別のところに病気が発症したりすることを病巣感染と言います。掌蹠膿疱症は病巣感染か深く関わる代表的な疾患です。歯周病や根尖病巣、慢性扁桃炎、慢性副鼻腔炎などが発症のきっかけとなります。

歯科金属

歯科治療で使われる金属は唾液やプラーク、口腔内のpHや温度、歯ブラシによる摩擦等で腐食しやすく、体内に溶け出し吸収された金属イオンの一部が手や足の汗の中に含まれます。そのため手や足に症状が出やすいです。

歯科用金属:パラジウム、アマルガム、銅、銀、鈴、亜鉛など

タバコ

掌蹠膿疱症の方の7~8割は1日20本以上の20年以上の長期喫煙者という報告があります。禁煙することで症状が軽くなったり、治療効果の向上がみられる傾向があります。
またタバコは歯周病のリスクファクターでもあり、歯周病の罹患や重症化のリスクを高めます。

掌蹠膿疱症の検査・診断

皮膚の症状を確認します

掌蹠膿疱症は皮膚の病気なので皮膚科を受診するのが一般的です。まずは皮膚科で問診や拡大鏡を使った視診、皮膚生検、血液検査、金属パッチテスト等の検査を行い、掌蹠膿疱症かどうかを診断します。
その後掌蹠膿疱症と診断され歯科的な病巣感染や歯科金属が原因と考えられる場合は、歯科医院でレントゲン撮影や虫歯・歯周病の検査等を行い、お口の中全体を確認します。

  • 喫煙歴
  • 金属アレルギーの有無
  • 前胸部の関節症状、痛みの有無
  • 病巣感染の原因となる虫歯や歯周病、扁桃炎等の確認
  • 喉の渇き、易疲労性、動機の有無など
  • 合併症の有無

掌蹠膿疱症の治療方法

かゆみなどの症状を抑える対症療法としては、皮膚科にてステロイド軟膏や活性型ビタミンD3軟膏等外用薬の使用や免疫抑制剤の内服、紫外線療法を行います。歯科においては歯周病や根尖病巣の治療、原因となった歯科金属の除去を行います。病巣治療による症状の回復には時間がかかりますが、治療を受けた6〜8割の方は治癒またはほとんど気にならない状態まで回復します。治療後1〜2年でよくなることが多いです。

掌蹠膿疱症改善のための歯科治療

歯周病の治療

歯茎に炎症(発赤、腫脹、出血)がある場合は歯周病の治療を行います。お家での歯磨きやフロス、歯科医院でのクリーニングや歯石の除去によってお口の中の歯周病菌を減らします。

歯周病の治療について

根尖病巣の治療

レントゲン写真で歯の根の先に膿が溜まってできた嚢胞が確認された場合は、被せ物を外して根っこの消毒(根管治療)を行います。根尖病巣は無症状のことがあるため、患者様と相談した上で必要と思われる歯科治療を行います。

銀歯を除去してセラミックに替える

歯科金属に対して金属アレルギーがある場合は、セラミックやレジンといった金属を使用しない材料に替えると2〜3ヶ月ほどで症状が緩和されます。全部の銀歯を替えなくても本数を減らすだけで体調が良くなる方もいます。

金属アレルギーを起こさないために歯医者でできる対処法はこちら

※石鹸や洗剤、小麦やチョコレートなどの食べ物にも金属は含まれており、皮膚症状に影響を及ぼす金属は歯科金属だけではありません。銀歯を外した後は必ず他の被せ物を入れなくてはいけませんので、金属除去は慎重に行いましょう。

掌蹠膿疱症の予防

お口の中を清潔に保ちましょう

歯の治療に金属を使わないメタルフリー診療や虫歯・歯周病の治療は掌蹠膿疱症の予防になります。お口の中に銀歯が入っていても無症状で害のない場合には無理に外す必要はありませんが、掌蹠膿疱症は突然起こる病気なので今後は増やさないほうが良いでしょう。また銀歯は二次カリエス(再び虫歯になること)のリスクもとても高く、根尖病巣を引き起こす可能性が高いです。
歯科以外にも掌蹠膿疱症の原因はありますが、日頃からうがいや丁寧な歯磨きを心がけ、定期的に歯のメンテナンスに通い、考えられる可能性を一つ一つ取り除いていくことが大切です。

公益社団法人日本皮膚科学会「掌蹠膿疱症」参照

この記事の編集・責任者は歯科医師の山下 陽次朗です。